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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)240号 判決 1948年6月12日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人古田進の上告趣意書は「原審は被告人が拳銃一挺及彈丸を原審相被告人より買受け所持して居ったといふ事実を認定し之に對して銃砲等所持禁止令違反の罪に問擬してゐる、然るに右銃砲等所持禁止令は行政的措置を以て銃砲等を所持する者に對し之を一定時期迄に届出、提出の義務を課し右義務に違反した右時期迄の所持者を處罰するの趣旨であって、右時期經過後所持者より取得所持する者をも處罰の對象とすべきものではないと考へる、蓋し其の後更に一定時期を限って銃砲等の所持者に對し提出義務を課し、右時期迄に提出せる者は從來之を合法的に所持してゐたものと認めてゐる等の措置の講ぜられてゐる実状より見ても、この事は首肯し得ると信ずる、原審が之に對して右銃砲等所持禁止令を適用したのは違法なる裁判たるを免れない、この點に於ても原判決は破毀せらるべきものである」というのである。

しかし、昭和二十一年勅令第三百號銃砲等所持禁止令は、同令施行後国内における銃砲火藥等の所持を全面的に禁止するものであって、たゞ例外として、同令第一條但書に掲げた一乃至四の場合について、特に地方長官の許可を受けたときはこの限りでないと定めたのであって、苟くも同令施行後、許可なくして銃砲等を所持するものは、同令施行の當時から引きつゞき所持するものと、その後においてこれを所持するに至ったものとを問わず處罰の對象となるのである。同令附則に定めた期間は、右の許可申請をなすべき期間を定めたに過ぎないのであって、所論のように、右の期間に届出、提出の義務を怠った所持者のみを處罰するという趣旨でないことは、同令規定の明文上疑のないところである。(或は、ところによっては、所論のように、その後において、更に警察等が一定の時期を限って、銃砲等の提出を命じ、これに應じたものは、これを不問に付する等の措置をしたことがあるとしても((本件がかゝる場合でないことは記録上明白である。))これはもとより行政上の措置に過ぎないのであって、法令の解釋に、何ら資するところはないのである。)

要するに、所論は獨自の見解に立って原判決を攻撃するもので、採用の限りでない。

以上の理由により、本件上告を理由なしとし刑事訴訟法第四百四十六條により主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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